クライミング入門ガイド: 初心者向けのステップバイステップ

クライミングは、自然の中で体を動かす魅力溢れるスポーツです。初心者でも楽しむことができ、必要な道具や技術を学ぶことで、徐々にスキルを向上させることができます。まずは基本的な用語や安全対策について理解を深めましょう。そして、指導を受けながら、簡単なルートからトライすることで自信をつけていくことが重要です。仲間と共に楽しむことで、より充実したクライミング体験が待っています。
クライミングとは
クライミングの種類
クライミングには種類があります。まずは「ロッククライミング」です。ロープによって安全を確保します。重要なスキルとして、ビレイ(確保)技術の習得が必要です。その中でも、岩の形状に合わせて、手足のみで前進することにこだわる「フリークライミング」または「スポートクライミング」、ラダー(アブミ)などを使用して前進手段として人工物を用いる「エイドクライミング」があります。
次に、「ボルダリング」があります。ボルダーとは「大岩」のことですので、「大岩登り」と訳することができるでしょう。人工的な手段はもちろん、ロープなども一切使用せず純粋に自分の力で登るスタイルです。着地の衝撃を吸収するためのマット(クラッシュパット)の使用が認められていますが、それすら使用しない厳格なローカルルールを持った地域も世界には存在します。概ね3〜4m程度の高さの課題が多いですが、5mを超える危険な課題もあります。それらは「ハイボルダー」「ハイボール」などと呼ばれ、高度なスキルと精神力を試されます。最後に「アルパインクライミング」です。これは山岳地帯で行うクライミングで、天候や地形も考慮する必要があります。山の中の壁そのものを目的にした行為もあれば、登頂の手段として、クライミングを採用しているケースもあります。
インドアクライミング
アウトドアクライミング
必要な道具と装備
クライミングを始めるにあたり、必要な道具と装備を整えることは非常に重要です。
《クライミングシューズ》
スポーツクライミング専用の靴です。極小のスタンス(足掛かり)をしっかり捉えるには、体重をかけた時に靴の中で足にズレが生じない必要があるので、普通の靴と比較するとかなりキツめのサイズになります。それでも前述のクライミングの種類に応じて、靴のタイプやフィッティングの程度が変わりますので、専門店(登山用品店)のシューズ担当者に自分の希望を相談して、適切なモデルとサイズを選びましょう。
《ハーネス》
ロープを使うクライミングでは必須の用具です。これも安全確保の上では、もっとも重要なアイテムなので登山用品店で、「スポーツクライミング」専用のモデルの中から選びましょう。ハーネスはサイズの選択も重要です。いつもTシャツでしか登らないなら、体格にピッタリのものが良いですし、冬山でも使いそうなら、調節が容易なモデルが良いかもしれません。インターネット上の通販サイトなどでは、「クライミング用ハーネス」などと検索しても、全く用をなさないような代物が平気で出てきます。専門店のクライミング用具コーナーのスタッフに相談するべきです。
《ビレイデバイス+安全環付きカラビナ》ルベルソ(Petzl)、ATC(Black Diamond)、ATCガイド(Black Diamond)などが一般的なモデルです。大別して「シングルロープ」用(1本のロープ)、「ダブルロープ」用(2本のロープ)とありますが、将来的に外岩のマルチピッチに出かけるようになりたいなら、「ダブルロープ」用を購入すると良いでしょう。懸垂下降も、このタイプを使用します。また、ビレイデバイスと組み合わせる安全環付きカラビナは、HMS型と呼ばれる形状で反転防止のバネが付いたタイプが推奨されます。こちらも専門店で相談しましょう。
《ビレイグローブ》
確保の際に使用するグローブです。専用の物が優れていますが、ホームセンターなどで作業用のグローブでも代用できます。その場合は豚皮など、皮革製のものが良いです。
上記はロープクライミングに必須のものです。とりあえず、インドアのボルダリングから始める方は、上記のうち「クライミングシューズ」だけあれば充分です。
《チョーク+チョークバッグ》
チョークとは滑り止めの粉で、手指に擦り込んで使います。専用のバッグがあります。腰につけるタイプと、ボルダリング専用の床置きタイプの二種類があります。ロープクライミングをするのであれば、腰に付けるタイプが良いです。必須の道具ではありません。
《ヘルメット》
インドアクライミングでは必要ありません。外の岩場に出かけるのであれば、落石や他のパーティからカラビナなどが落ちてくるかもしれません。また、自然の岩場は形状が複雑なので、自らの墜落で岩場に頭部をぶつけることもあり得ます。登山・クライミング用の物を購入しましょう。
クライミングジムの選び方
クライミングジムを選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮することが大切です。まず、施設の場所です。アクセスが良い場所にあるジムを選ぶことで、通いやすくなります。
次に、設備の充実度です。ボルダリング専門のジムも多くあります。それらのジムでは、ロープでの確保などを学ぶことはできません。ただし、純粋に動きを学びたい時には、それらのジムも有効です。さらに、スタッフのサポートや指導がしっかりしていることも重要です。初心者でも安心して質問や相談ができる環境を整えているジムを選びましょう。大抵、ホームページなどに実施している講習なども紹介されています。
最後に、料金や会員制度を比較することも忘れずに行ってください。自分のライフスタイルに合ったジムを見つけることで、クライミングを長く楽しむことができます。
基本的な技術・登り方
まずは安全確保の技術を習得しましょう。しっかりしたクライミングジムでは、初心者のための確保技術を無料で教えています。そういったジムで、パートナーを確保する方法を学びましょう。安全にクライミングを始めるために、真っ先に採られる練習方法は「トップロープ」と呼ばれる方法です。ルートの最上部の設置された支点にあらかじめロープがかけてあり、ロープの一端にクライマーが連結し、もう一端を確保者が確保する方法です。つるべ式になっており、クライマーが登る都度にたるんでくるロープを確保者が手繰りながら、常時墜落に備えることができます。特に下部ではしっかりロープを張ってやる必要があります。クライミングロープは若干の伸びが設計されています。登り始めは出ているロープ量も多いので、スタート近くで落ちるとロープの伸びで地面に着いてしまい、捻挫などの危険があるからです。
クライマーが登り終わったら、「テンション」とか「張ってください」とかのコールがあります。その時は、ビレイデバイスにロープの余長がないようにしっかりと張って、「ロープ張りました」「テンションOK」などとコールします。「降ろしてください」のコールがありますから、ロープをゆっくり繰り出しながら、クライマーを降ろしてあげます。手の中をロープを滑らせるように降ろします。グローブの摩擦を利用し、ブレーキ側のロープを両手で持ってコントロールします。初めは低い位置でテンションをかけてもらい、ロワーダウン(降ろすこと)の練習をしましょう。
また、ロープを使わないボルダリングにも、注意すべき点がいくつかあります。登る際に、他のクライマーがいる時には、その人のトライが終わって壁から離れてから壁に近づく。マットの上にいつまでも居ない。などなどの基本的なルールがあります。ジム内にルールの掲示などがありますから、よく読んでおきましょう。
基本的な登り方
基本的な登り方をなどというものはありません。好きに登ればいいのです。安全対策さえしっかり施していれば、登り方そのものにはなんの縛りもありません。
ただし、効率の良い登り方やセオリー(コツ)などはあります。これらは色々な課題で難しさを体験しないと、そのセオリーの重要さが理解できません。ですから、登り方そのものはまず体験して、試行錯誤して徐々に覚えてください。
ただし、最初からできるセオリーがひとつだけあります。それは、その課題のスタートからゴールまで、どのホールドをどのように使うのか、登り始める前によく観察して、予測を立てることです。これを「オブザベーション」と言います。最初は「結局思っていたのと、全然ちがった…」などということがほとんどです。それでも「オブザベーション」をしてから取り付くのです。行き当たりばったりで登っていると、いつまでも上達しません。オブザベーションは繰り返しているうちに、だんだん精度が上がってきます。昔の人はこれを「岩を見る目を養う」などと言っていました。今でもスポーツクライミングの大会などの映像を見れば、選手たちが競技ルートを双眼鏡などを使って、実際に手を動かしながら脳内リハーサルをしているシーンを見ることがあります。あれが「オブザベーション」です。クライミングは、ちょっと取り組めばピンときますが、全身を使ったパズルワークです。脳も含め、全身を使うのですね。
初心者が気をつけるべきこと
必ず、講習会などで安全対策をマスターしましょう。特にビレイ(確保)の基本所作などは、クライミングジムなどでも有料・無料の講習会を実施しています。それらを積極的に受講してください。そのほかにも、都道府県の山岳連盟などが安全講習などを実施しています。当ダンプリングでも、そのような講習を実施しています。
また、そのような講習を受けていても、市販の技術書などで知識を強化することを強くお勧めいたします。ロープクライミングでは、ロープの結束方法や確保器具の使用方法、その他もろもろ、覚えるべきことは数知れずですし、ボルダリングのみを趣味にするにも、怪我の予防や運動生理学などを学ぶことで趣味に深みも出てくるというものです。
ボルダリングなどは一人でもできますが、できれば友人を作ってください。お互いに切磋琢磨できる人がいるのは、とても大切なことです。ロープクライミングでは、パートナーは必須ですしね。